近年台湾に進出する日系企業の投資額や件数は徐々に増え続けている。投資額の規模については、台湾に進出する企業のうち科学技術や金融保険などの大型案件が大半を占めている。しかし台湾で発展している日本企業のうち最も件数が多いのは飲食業界なのである。日本国籍の個人が台湾で開業する他、日本で一定レベルの知名度を有するブランド力を台湾市場に持ち込み、新たに開業する大型商業施設や百貨店に進出することで、話題性をもつと同時に客足を確保することもある。その他にも台湾の有名なツールと提携するものやコンビニエンスストアやスーパーマーケット等の企業との技術協力を行うものもあり、日本の飲食文化が台湾人の日常生活に広く浸透している。この事実は、多くの日本人にとって身近な光景である牛丼や手頃な回転寿司などのチェーン店が営業開始当初大行列で話題となり、大きなブームとなっていったことから裏付けられる。
また、飲食業界の配達サービスが新規ビジネスとして展開され始めた。飲食業全体の利益において、配達サービスの営業利益が占める比率は常に上昇しており、今後も成長の見込みがある。有名ファストフード店であるマクドナルドやモスバーガー、ピザハット等は言うまでもなく、さらに多くの上場企業のチェーン店ブランドも様々な配達サービスを次々と提供している。この根底には台湾の本質的な飲食文化や習慣と日本の外的要素とが相互に影響を及ぼし合っていると考えられる。まず台湾の外食文化が非常に盛んなことが大きく関係している。特に独身者や核家族世帯ではライフスタイルや住宅の環境上、料理をする時間がなかったり、もともと部屋にキッチンがついていなかったりすることが多い。こうした状況下において消費者は最終的に外食を選択することになるのである。加えて、都会の人口密度が高く、オフィス街と住宅地が狭い範囲に混在している台湾の環境において配達にバイクを用いることは理にかなっている。配達サービス業者からしても、バイクを足代わりにすることは台湾人の習慣となっているため、配達員のアルバイトを募集することも容易なのである。
外部要因としては、まず台湾で消費者が配達サービスアプリを使用することが徐々に習慣化していることである。商品の注文や支払い手段などにかかわらず、スマートフォンの普及、および通信業界の競争下におけるインターネット使い放題利用者の増加に伴い消費者の配達サービスに対する懸念が次第に減少していった。さらには配達サービスにより時間を節約できるという利便性を享受し始めた。また、約40万人の台湾人が中国で仕事や生活をしており、さらに旅行等の経験を加えると多くの人が中国の発展した配達サービスおよびスマホ決済の使用に自然となじんでいることが挙げられる。実際にそれらを使用したことのある台湾民衆の反応および利便性に対する積極的な評価も間接的に台湾におけるこの種の飲食サービスを促進しており、支払い方法の進歩に刺激を与えている。
では、急速な成功を収めるため、台湾は直接中国の飲食配達サービスを取り入れても良いのだろうか。台湾の人材コストのみの観点から述べても、台湾と中国では少なくとも配達員の報酬および雇用数に差があることがわかる。それゆえ中国の素早く、かつ安価なサービスに達することは困難である。しかし他方で、数多くの高単価商品(例えば麻辣鍋やステーキなどを販売する飲食ブランドの参入)は、現在台湾の飲食配達市場において「市場の需給に一致さえすれば価格についてはむしろ二の次だ」という傾向を示している。言い換えると、行列に並ぶか早めに予約しないと食べられないグルメも輸送費などの配達サービスの報酬分多めに支払うだけですぐに楽しめるということである。いわば「お金で時間を買う」という取引精神が現在の消費者に受け入れられているのだ。
しかしながら、徐々にこの種の配達サービスを主要なツールとしているブランドやレストランには、常に長蛇の列や人込みをもたらす日系ブランドや日本料理があまり進出していない。仮にあったとしても、多くは弁当や丼もの、もしくは居酒屋を主とするものである。人気の高い寿司や麺類及びデザート類はまだ参入しておらず、この先ブームを引き起こすことが期待されている。
日本飲食企業が、これから配達サービスを取り入れるといっても手遅れではない。まだ知られていない日本の特色を備えた料理がたくさんある。経営オペレーションにおいても柔軟性を高め、リスクを下げることができる。例えば初期においては比較的小さな店舗から始め、一部の資本を配達サービスの運営に投資し、商品を配達した後もおいしさと衛生状態を保てるよう工夫しながら調整していく。こういった方法で人気を博していき、開拓を遂行していくという戦略である。さらに一部の配達サービスでは自ら収集し分析した消費者の習慣に基づき、新たな商品販売の提案として顧客に提供することで実店舗での経営に役立てている。
料理そのものだけでなく、食べ物の鮮度や温度を効果的に保つための商品も増々需要を増やしている。料理の状態やサイズなどに合わせたカスタマイズ食器や包装などもまた別の市場を形成している。さらにもし台湾政府が積極的に推進する「プラスチック削減政策」に協力するというのであれば、環境に優しい原材料等を提供している製造業者にもさらなる機会を生み出す。また、現時点で台湾における配達サービスの多くは欧米諸国の企業のものであるが、配達サービスまたは配達物流に関連する管理は依然として競争もしくはサービス向上の余地がある。さらには様々な支払い方法または操作しやすい注文サービスのアプリやシステムなどは、異なる飲食及び日本独自の企業文化が参入することで、さらなる成長が期待される。
台湾市場はそれほど大きくないため「食べる」という日常生活の一部分で成り立っている消費も比較的限りがある。しかし台湾は市場と土地の両方が小さいため、新たなツールおよび経済モデルを試してみたいと思えば、むしろ実現しやすい環境である。飲食企業であれば中国市場に憧れるのは必至である。それならば配達およびスマホ決済が当たり前である中国に先駆けて台湾でまず試してみるのも理想的な経営策略だといえるのではないか。