2016年は国際社会、政治の常識を覆すと言っても、過言ではない一年になったのではないでしょうか。イギリスのEU離脱、フィリピンのドゥテルテ氏の大統領就任、アメリカのトランプ氏の大統領戦勝利等、これら予想外のことが次から次へ実現した。このような国際社会の動揺が叫ばれるなかで、台湾大統領の蔡英文とトランプの電話会談もまた世界、特に東アジアに無視できない波乱を起こした。

だが、冷静に考えると、今までに起こった国際政治のにおける変化も、それほど不可解な事ではなかったのかもしれない。確かに、世界の平和、自由、繁栄を求め、沢山のレジームや体制が構築させ、各国もそれを遵守するために、ある程度の譲歩もした。しかし、移民の自由化が問題になり、資本主義では富の再分配ができずに、貧富の差が拡大する一方だ。結局、人間は私利私欲に負けてしまい、世界のことより、まず自分の利益を最優先してしまう。国民が保守的で安定した生活を求める声を政治に反映させ、現在の国際社会になったのだと考えられる。

こうした雰囲気や世論のなかで、「Make America Great Again.(アメリカを再び偉大に)」という方針で、トランプはアメリカを導く。2012年に習近平も「中国の夢」、中華民族の偉大なる復興という目標を発表し、国際体制への挑戦状とも見なされていた。そして、アベノミクスへの批判を乗り越えて、2016年の参院選に勝利した安倍政権も、国防や憲法9条の改正に力を入れ、「正常な大国」の目標に向かって確実に進んでいる。なにより、2020年のオリンピックの場を借りて、国際舞台で再び日本の存在を強く示していこうとするという野望も非常に強いと考えられる。すなわち、地域の平和を守るより、自国における利益の最大化を図ることである、と判断できる。

慰安婦についての論争が続くなか、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)も成功締結した。日本とロシアの間で、領土問題になっている北方四島で「共同経済活動」を行う協議を開始することを合意した。トランプの当選により、東アジア諸国がもより実質的な、現実的なニーズを重視し、それに応じて関係を構築する。今まで行ってきた、中国をアメリカ中心のゲームルールへ誘導するという戦略も明らかに失敗したので、アメリカ、日本等各国の対中国戦略と外交政策もきっとこういった実質的な、現実的な方向で調整するものだと考えられる。この調整の一つは台湾に対する戦略的な見方だ。蔡英文とトランプによる電話会談が行われ、「日本台湾交流協会」の改名がなされた。これらの出来事から、台湾の戦略的な価値が再評価され、さらには国として認められていると言ってもよいのではないだろうか。

今までアメリカと日本にとって、中国の実力は未だ大国とは言えず、世界に挑戦するには時期尚早であり、台湾と中国の関係は「便りのないのはよい便り」という暗黙の了解があった。現在、日本やアメリカが偉大な国になるため、両岸関係の安定は相変わらず重要だが、もう台湾の力だけでは維持できない情勢になっている。今の状況の日本とアメリカなら、以前より台湾を助けようというモチベーションが高まってきた。

もう一つ面白いのは、今まで世界は共産党の不透明性と予測不能性を警戒して、慎重に付き合ってきた結果、共産党に強大になる余地を与えたかもしれない。これから、狂人と呼ばれるトランプも世界から同じように接されていると考えられる。世界、特に中国がトランプの動向を予想し、対策を練るのにかかる時間、そして、その動向に反応する慎重さ、これらが台湾にとって国力を増強する一つのチャンスだと思われている。

楽観的に見ると、今の国際政治は台湾に有利な情勢になりつつある。その一方で、有利な立場に立つため、蔡英文には解決すべき課題がある。国内外問わず、蔡英文の政策には致命的な問題がある、それは「明言していない」こと。国内における司法改革、年金制度、労働者の休暇問題について、無駄に時間をかけ、さらに決断力も不足しているため、支持者の中でも、批判が高まってきた。国外政策もはっきりしていない。両岸関係における現状維持や新南向政策も具体的な内容をずっと問われている。外交には戦略の一つとして明言を避けることも重要であるが、今の蔡英文政権は外交政策を簡潔に説明できておらず、単なる学者たちの集まりに過ぎない、とも思われている。

したがって、この2017年に蔡英文が実行すべきことは少なくとも二つある。一つは、以前に増して他国との実質的な関係の構築に注力することである。例えばTPPが崩壊する状態で、一刻でも早く両国間のFTAを始動すべき。その中で、日本農産物の解禁も多少強引にでも指導していくはずである。新南向政策を見出す上で、大統領の訪問や形のある提携等の可能性も考えなければいけません。

もう一つは「特殊な国と国の関係」を再宣言することです。即ち、今の台湾世論が認識している台湾と中国は二つの国という関係を明確に宣言しなければいけない。名称変更があってもいいけど、重要なのは国内のコンセンサスの強固、そして、国際社会に台湾のことが国家として認められる場を提供することである。実質的な関係と他国からの承認があるため、両岸関係に関わっているアクターもだんだん増加する。それによって、共同の利益を創出することも可能であり、共同の利益を守るため、中国からの威嚇も分散されるだろう。

台湾がスーパーパワーにはなれず、そもそもなる必要もないのだ。ただし、小国の柔軟性と戦略価値を活用することが何より大事だ。そのために、国家の軸や方針を確定させ、そして実行することが、台湾国民が望んでいる政府なのである。2017年の台湾にとって、予想不能なトランプを恐れるべきなのではなく、明確な国家利益と目標を持っていない台湾自身を危惧すべきである。