国として自国の安全保障と利益確保は一番重要な戦略目標と考えられるが、同じ地域にある国と国の間で戦略目標が重なると、競争になる可能性が高い。そのため、隣同士の二つの大国は絶対にある程度の競争になっていくと思われる。国際制度の完備とグローバリゼーションに伴い、昔のような軍事戦争や植民地競争を行わなくなっても、経済や貿易の競合が益々激しくなってくる。
今の日中関係をみると、実は両国の戦略目標や外交政策が似ている。鄧小平が提唱した「韜光養晦(能ある鷹は爪を隠す)」という消極的な外交方針を続けて採用し、自国の発展を中心としてきた中国は、だんだん国力にふさわしい発言権を求め、責任を負う大国になる政策を打ち出し、積極的な政策へ変わってきている。アメリカに「新型大国関係」を呼びかけ、新たな経済計画の「一帯一路」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」を推し進め、「周辺外交」に取り組むことなど、世界で主役になっている中国に、国際社会が慣れるために様々な方針を合わせて推進している。一方、経済大国である日本も世界での役割を拡大するため、安保改正で「積極的平和主義」を推進し、「地球儀外交」を通して世界諸国との友好を維持し、「正常な国家」になるように尽力している。
客観的に見れば同じ姿勢で動いているだけなのに、それぞれが合理的に発展しようとすると、もう一方が現状を壊そうとしているように感じてしまう。なお、中国は日本に侵略された歴史により、いつも日本に対する警戒を強めている。そのため、同じ東アジアに位置する日中とも世界舞台で国力にふさわしい発言力を得るという積極的な政策を採用したら、お互いに脅威感を抱かせる。中国のアジア戦略の中で、世界での影響力を拡大しようとする日本はライバルになるが、中国が主張している国際秩序に反対しない日本との友好関係を構築する可能性が高いとも考えられる。ただし、今両国の戦略目標が重なっており、両国の首脳も強い性格で自国本位の姿勢が目立ち、競争の状態になってしまう。
東アジアの未来を考えれば、避けられない地域統合という目的地へ向かい、日本と中国は国益を守るという前提により、異なる統合ルートを提唱していると思われる。つまり、日中がリーダーとして競争になる可能性が高い。日中とも東アジアのリーダーになりたいということより、むしろ国家利益と安全保障のために競争の状態になっており、リーダーの位置争いになってしまうということが現実に近い。今既に発生している競争が将来にも続いていくのか?日中関係が競争からある程度の協力関係を作れるか?これは二国の首脳や政府が考えなければならない課題と思われる。