台北市内に雪が降った。

中央気象台によると、1915年以来、100年ぶりの雪という。

漆黒の、混濁とした淡水河に、緩やかに雪が降る。

凛とした静謐な朝が訪れた。

 

1915年、日本統治時代である。

当日の朝日新聞に「初めてみる雪に、多くの台湾の人々が狂喜した」とある。

3年後の1918年。明石元二郎が、第7代台湾総督として赴任した。

病没まで1年4ヶ月。教育、電力、鐡道の社会インフラを始動させた。

ドイツ皇帝ヴェルヘルム2世に、

「明石一人で20万の兵力に匹敵する」と言わせた交渉能力が日本政府を動かした。

明石のもと、時代が動いた。

多くの台湾人と日本人が、立国を夢見て能動的に動いた。

良い国家を創りたい。思いを皆が一にし、全身で発露した。

思想や政治を超えて、台日が一心不乱に協力した。

そんな時代が100年前にあった。

 

明石は、生前、台湾での埋葬を切望した。

台湾滞在1年4ヶ月。

何が明石をそこまで突き動かしたのか。

明石は、台湾で何を感じたのか。

 

淡水河に、悠々と覆いかぶさる漆黒の観音山。

若き政治家、李登輝さんは、幾度となく登ったという。

頂上の切り立った岩壁で、政治の判断力を養った。

これも混濁での意思の発露だ。

 

ロシアの哲学者、バクーニンは言う。

「本物の政治は混濁から生まれる」

今年1月台湾では、120年の混濁を糧に民主が芽生えた。

蔡さんのもとで、民意を得た政権が生まれた。

主権国家としての産声だ。

 

そして、同じ年の1月。

松江路の一角にワンラインが生まれた。